ペンタゴン・ペーパーズ

ペンタゴン・ペーパーズを観た。否が応でも今の日本の政治状況を連想してしまう内容だった。登場人物たちによって発せられた言葉の数々が今でも頭の中をぐるぐると回り続けている。

ハリウッド映画には、国家の横暴や不正に対して市民の側が戦いを挑み、勝利するか、もしくは敗北したとしてもその過程で何らかの光を見出すという枠組みに沿って作られた娯楽作が少なくないように思う。

邦画で同じような類の娯楽作があるかと問われると、正直なかなか思いつかない。

権力の乱用や社会に存在する不正義に対して声を挙げ、実際に行動を起こすことで何かを成し遂げた経験そのものが日本人には不足しているということなのだろうか。

必ずしもそうではないだろう。

国家の大きな物語に身をゆだねて気持ちよくなるのではなく、草の根の視点から「私たちもまだまだ捨てたものではない」と思わせてくれるような邦画に出会いたい。

“The only way to protect the right to publish is to publish.”

「報道する権利を守る唯一の方法はそれを報道することだ。」

ペンタゴン・ペーパーズ 予告編

https://www.youtube.com/watch?v=vOb8MKgB1qY&t=58s


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# by uskay21 | 2018-04-15 10:17 | 映画紹介

結婚/山之口獏

山之口獏(1903-1963),冲繩人,年輕時在東京的街頭過住所不定的流浪生活,34嵗那年結婚,我心目中的人間國寶。

《結婚》山之口獏

詩は僕を見ると
詩看到我

結婚々々と鳴きつゞけた
結婚結婚地繼續唱著

おもふにその頃の僕ときたら
想來當時的我

はなはだしく結婚したくなつてゐた
想結婚想得要命

言はゞ
説起來

雨に濡れた場合
淋雨的場合

風に吹かれた場合
被風吹過的場合

死にたくなつた場合などゝこの世にいろいろの場合があつたにしても
想要死的場合等等就算這世上有各式各樣的場合

そこに自分がゐる場合には
衹要那場合上有自己的存在

結婚のことを忘れることが出來なかつた
我忘也忘不了結婚的事

詩はいつもはつらつと
詩總是精神滿滿地

僕のゐる所至る所につきまとつて來て
緊跟著我所在所至的地方

結婚々々と鳴いてゐた
結婚結婚地唱著

僕はとうとう結婚してしまつたが
我終於結了婚

詩はとんと鳴かなくなつた
詩卻突然默不作聲

いまでは詩とはちがつた物がゐて
現在與詩不同的東西在

時々僕の胸をかきむしつては
偶爾抓撓我的胸口

簞笥の陰にしやがんだりして
要麽在衣櫥的暗處裏蹲下來

おかねが
錢呢

おかねがと泣き出すんだ。
錢呢地哭起來



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# by uskay21 | 2018-04-08 21:41 | 詩歌

戦後の日中出版文化交流を支えた人々

東方書店に43年間に勤め、先月退職した同僚のWさんから43年前の東方書店の様子について話を聞く機会があった。知らなかったことが多く、色々と考えさせられた。

何よりも当時の社員の経歴に驚かされた。

例えば1975年当時の出版部長Sさんは日本エスペラント学会の主要メンバーの一人。1967年に出版された『エスペラント便覧』の編著者の一人に名を連ねている。高校時代に治安維持法で逮捕され、刑務所に入っていたこともある筋金入りの共産主義者。

戦前満鉄調査部に所属していたNさんは、中国語のみならずロシア語も流暢に操ることができたという。中国語と英語ならまだしも、中国語とロシア語を高いレベルで使いこなせる日本人は今あまりいないのではないか。Wさんは一時期Nさんの勧めでニコライ堂のロシア語学校に通っていたが、先生と喧嘩になってすぐやめてしまったとのこと。先生が、「中国の経済学はデタラメだ」と言ったことに対してWさんが、「何を言っているんですか。中国経済には実践が伴っているんです。それに比べたらソ連経済なんて….」と強く反論したことが発端らしい。なんちゅう会話を語学学校でしとるんや....。今だったら考えられない。Wさんはその後もしばらくは昼休みの時間を利用してNさんからロシア語を教わっていたらしいが、それでロシア語ができるようになったかという、残念ながらそうではないようだ。うーん、もったいない。

中国東北部の長春で敗戦を迎えたBさんは元満映社員。脚本部で満映が製作する映画の脚本を書いていたらしい。1945年8月、ソ連軍が長春のすぐそばまで迫っていたとき、Bさんは当時の満映理事長・甘粕正彦から青酸カリを渡されたという。甘粕正彦は服毒自殺したが、死にたくなかったBさんとBさんの妻はそれを飲むふりだけして実際は飲まず、結果として二人とも生き延びることができた。その後Bさんは八路軍と行動を共にし、1949年10月に中華人民共和国が建国されてからは、1970年に日本に帰国するまでの20年間、北京放送局日本語部の職員として働いた。

実際どこまで本当なのかはわからないが、ネットで検索すると、ゴリゴリの軍国主義者だったBさんが八路軍の少年兵と出会い、彼との交流を通じて日本が中国の民衆に与えた苦しみを痛感し、それまでの自らの考え方を反省した、というエピソードを見つけることができる。

Wさん曰く、当時の東方書店は、「中国書籍の販売を通じてマルクス・レーニン主義、毛沢東主義を普及させる」という目標を明確に掲げていたとのこと。

今を生きる私たちの多くは、「八路軍の少年兵との出会いによって世界観が変革された」というをエピソードをなかなか素直に受け取れないだろう。また「毛沢東主義を普及させる」という目標に対しては嫌悪感さえ抱いてしまうかもしれない。Sさん、Nさん、Bさんといった人たちの中国認識を批判的に考えることはとても大切だと思う。しかし批判がより良い未来を築くためになされるのではなく、当時の左派運動や知識人全体に対する何となくの忌避感を生み出すだけの批判になってしまうのは、それはそれで問題があるように感じている。彼らの認識は甘かった、間違っていたと切り捨てるのは簡単だろう。だがそうすることによって、受け継いでいかなければならないものまで一緒くたに押し流してしまっていないだろうか。

それは例えば、信じていたものの崩壊を経験することで生まれる緊張感、戦争は絶対やってはいけないという純粋な願い、格差が広がり続けるこの世界の構造自体を変えていこうとする意志。それらまでもが左派に対する否定や嫌悪感と共に消え失せ、その結果として生じた空白を、歴史的な痛みを伴わない、超越的な視点からの客観主義と相対主義が埋めていく。このような土台の上で築かれる日本と中国の関係は一体どんなものになるのだろうか。

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# by uskay21 | 2018-04-08 13:07 | 本紹介

石川啄木詩歌集


普段日本文学の中国語版は買わないが、これは所蔵欲を掻き立てられた。台湾のグラフィックデザイナー、王志弘による装丁がいい。石川啄木の字体とか、印とか、シンプルだけど味わい深い。表紙には少しざらざらした和紙っぽい質感の紙が使われており、無意識に撫でまわしてしまう。

訳者の周作人(1885-1967)は魯迅の弟としても知られる中国の散文家、翻訳家、思想家。こちらが拍子抜けするぐらい平易な現代中国語で啄木の短歌を翻訳していると感じた。原文の持つ味わいは薄れているかもしれない。しかしそれ故にだろうか、

、啄木の短歌が内包する普遍性が、よりまっすぐ心に響いてくるような印象も持った。


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# by uskay21 | 2018-03-29 16:30 | 本紹介

季風書園閉店

最近閉店したことがメディアに取り上げられ、日本でも若干話題になった感のある上海の新刊書店・季風書園。2013年に上海と南寧を旅した際、一度訪れたことがある。当時つけていた日記を読み返したら、以下のようなことが書かれていた。 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今日は上海図書館駅構内にある季風書園に行ってみた。総合書店として幅広いジャンルの本を取り揃えているが、入口から入って目の前の平台には、選び抜かれた人文科学系の本が積まれており、季風書園の「わたしたちはこういう本を売りたいんです」という意志を感じることができた。 

上海には個性的な本屋が数多く存在するが、純粋に本を買いたいのであれば、ここに来れば大体事足りるのではという印象を個人的にはもった。滞在時間が短いときはとりあえず季園書園に行ってみるのがお勧め。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

もし上海に住んでいて、仕事に向かう途中に季風書園があったら、棚にほとんど変化はないと知りつつも、ついつい毎日足を踏み入れてしまのではないか。そんなふうに思わせてくれる本屋だった。

閉店は残念だけど、場所がなくなっても、人の記憶は消えない。季風書園が積み重ねてきたものを踏まえた上で、新しい本屋を始める人がまた出てくるだろう。

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# by uskay21 | 2018-03-29 16:24 | 本屋紹介


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